文章力を鍛えるために、僕がやっているトレーニング方法を1つご紹介します。教材は「ベスト・エッセイ」という本。僕は片手にペンを持ち、気になった部分に線を引いたりしながら読むようにしています。
70人を超えるエッセイ・アンソロジー
僕は、主に雑誌やウェブマガジンで記事を書いています(これまでの仕事はこちらをご覧ください)。そんな僕が文章力を高めるには、いろいろな方のエッセイから学ぶのが一番なのではないか。あるときから、そう思うようになりました。
エッセイというのは、筆者の思いや考えを、比較的コンパクトなボリュームでまとめるという特徴があります。こうした特徴から、自分の仕事に直結するノウハウがより多く詰まっているのではないかと思ったわけです。
かくして手に入れたのが「ベスト・エッセイ」(日本文藝家協会 編著、光村図書出版 刊)という本。書店の棚でよく見かける著名な作家、エッセイスト、詩人、哲学者などが約70人集まったエッセイのアンソロジー集です。それぞれのエッセイは3見開きくらいなので、ちょっとした時間を見つけて気軽に読むことができます。
どうやら毎年刊行されているようです。Amazonで調べてみると2002年版がありましたが、いつから始まったのでしょうか……。僕が最初に手に入れたのは2021年版でした。
読書の方法を変えた一冊
僕がこの本を読むときは、いつも片手にペンを携えています。「お!」っと思ったフレーズがあったら、即座に線を引くようにしているのです。また、面白いと感じたエッセイはページの端を折って目印にしたり、自分が知らない語彙はiPhoneを使って即座に意味を調べ、意味を書き込んだりしています。
ここまで記事を読んで、本に書き込みを入れたり折ったりすることに抵抗感を抱いた人もいるのではないでしょうか。元々は僕も、本を粗末に扱うなんて……と感じていました。しかし、作家で実業家の本田直之さんが書いた「レバレッジ・リーディング」(東洋経済新報社 刊)を読んでから、その認識がガラリと変わりました。
主にビジネス書を読むコツがまとめられている本なのですが、この根底にあるのが「読書を自分の投資にする」という考え方です。
漫然と文字を目で追っているだけだと、人はすぐに内容を忘れてしまう。そこで本田さんは、折り目をつけたり、大切だと思ったところに書き込みをしたり、能動的なアクションをすることを勧めています。そうすることで記憶に残りやすくなり、自分の知識のストックになるのです。
この本は他にもさまざまな気づきを与えてくれると思いますので、興味のある方はぜひご一読ください。
注目すべきポイントを教えてくれた「朝日新聞記者の書く力」
具体的に、僕がどんな箇所に線を引いているのかも触れておきます。
僕が注目しているポイント
- 短くて印象的な書き出し
- 比喩表現(直喩、暗喩)
- オノマトペ(擬態語、擬音語)
- 聴覚、味覚、触覚の表現
- 句読点による心地のいいリズム感
- 印象的な言葉の反復
- 自分の知らない語彙
こういったところに注目すると、作家の表現力のすごさが具体的に感じ取れるようになります。今まで漠然と読んでいたプロの文章が、手本の塊だったことに気づくわけです。同時に、自分との圧倒的な力量の差を痛感するのですが……。
名文を読むときの注目ポイントを教えてくれたのも、1冊の本でした。「朝日新聞記者の書く力」(真田正明 著 さくら舎 刊)です。40年間朝日新聞の記者を務め、夕刊のコラム担当までしていた真田正明さんが、魅力的な文章を書くためにはどんなことに気をつければいいかを教えてくれています。
この本は、どちらかというと中級者向けの文章術ではないかと思います。「ある程度のことは文章で伝えられるようになったけれど、人を魅了するようなレベルにはまだまだ。人を惹きつける文章はどうやって書けばいいの?」という疑問を解消してくれる本なのです。まさに、今の僕にピッタリの内容だったと感じています。
というわけで、今回は欲張って3冊の本を紹介しました。どれもおすすめなので、興味がありましたらぜひ!
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